イエロークリスマスの小さな奇跡②

 

イエロークリスマスの小さな奇跡
~美月編~

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
これは3話構成の物語
この記事は『第2話』
(フィクションです。)

主要の登場人物は2人
男性:明良(あきら)
女性:美月(みづき)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「ごめん、ちょっと実家に帰る。」
喧嘩がおさまると間髪入れず
美月は、そうつぶやいた。

 

明良との気持ちのすれ違いから
言い合いが始まり気がつけば
喧嘩にまで発展していた。

喧嘩するはずじゃなかったのに
喧嘩しようとしたわけじゃないのに
気がつけば言葉が止まらなかった。

 

 

バタンッ!

 

勢いよくドアを閉め
家を飛び出していった。

 

 

「だからクリスマスなんて、
 大っ嫌いなのよ!」

美月は小さくつぶやいた。

 

それは、
クリスマスが目前に迫る
12月22日のことだった。

 

 

実家に帰ると母親が
キョトンとした顔で
出迎えてくれた。

 

「あれ?今日帰ってくるとか
 連絡あったっけ?」

いきなりの帰宅に母は驚いていた。

 

 

「ちょっと明良と喧嘩して
 居ても立っても居られなくて
 それで、帰ってきたの!」
少し怒りを込めて言った。

 

 

母親はその言葉を聞くと
ニヤリとして言った。

「あんた、逃げてきたの?
 意外にノミの心臓なのね。」

「そんなことで逃げてくるなら
 この先、どれぐらいの回数
 逃げ帰ってくるのかしら(笑)」

 

美月は思ってもみなかった言葉に
さらにイライラが増してきて
ムスッとした顔で部屋に入った。

 

「もう、今日はご飯もいらない!
 寝るからほっといて!」

 

その言葉に母親は「ハイハイ」
という返事しかなった。

 

 

自分の部屋に戻ると
ベッドに飛び乗り
布団を頭までかぶって
考え事をしていた。

 

そう、美月には分かっていた。

 

実家に帰ってきたところで
【物事は解決しない】
ということを。

 

 

でも、


今は、母へのイライラと

明良と喧嘩した驚きと戸惑いと
1人になった寂しさが混ざり合い
何かをしようとも思えなかった。

 

頭の中には喧嘩したときの状況が
走馬灯のように流れていた。

 

「あぁ、もう!しらない!」

現在の時間を確認しようと
スマホを手に取った。

 

電話をかけようとしたけれど
通話ボタンが押せず
LINEを打とうとしたけれど
打つ言葉が出てこず
家に戻ろうかと思ったけれど
体が動こうとはしなかった。

 

美月は感情が入り混じり
寝付けない長い夜を過ごした。

 

◇ ◆ ◇

 

気がつけば昼過ぎまで寝ていた。

 

「美月!あんた仕事は?
 今日、仕事じゃないの?」

心配そうにしている
母の声が聞こえてきた。

 

今日は、明良と家でする予定の
クリスマスパーティーの準備用に
有休を取っていた。

 

「何のための有休なんだろ…。」

 

母親に事情を説明し
昼食を取ることにした。

 

ぼーっとした顔で昼食を食べて
もう一度、部屋に戻り
気がつけばベットで寝ていた。

 

「だからクリスマスなんて…。
 大っ嫌いなのよ…。」

 

 

美月は夢を見た。

 

子供の頃のクリスマスの夢を。

 

昔からあまり好きじゃない
クリスマスの夢を。

 

 

2歳上の姉がいるのだが
姉の誕生日が
クリスマスイヴだった。

 

だから、
クリスマスを祝うというよりは
『姉の誕生日を祝う』状況で
クリスマス感はあまりなかった。

 

 

クリスマスプレゼントも
姉のために費用をかけるせいか
自分のプレゼントは
少し貧相に感じるものだった。

 

食事のメニューも
姉の好きなメニューになるので
クリスマスなのに『カニ鍋』
というときもあった。

 

 

「クリスマスには!チキン!
 チキンを食べるんだよ!
 お母さんチキンは!」
と、叫んではみたけれど

 

「何言ってるのよ!
 鶏よりカニの方が高級よ!
 よかったねぇ、美月!」

母にはこのように諭されて
仕方なくカニをほおばっていた。

 

 

「お姉ちゃんの分のカニは!
 美月が食べてやるんだから!」
毎年やけ食いだった。

 

もちろん、
用意されるケーキも
クリスマスケーキではなく
姉の誕生日ケーキだった。

 

 

クリスマスソング?
いえいえ、歌うのは
バースデーソングですよ。

 

このように

姉が一方的に主役の状況なので
美月は姉に嫉妬しまくりで
毎年のように喧嘩していた。

 

 

1つ救いだったのは
クリスマスには学校が冬休みで
友達には会うことがない。

クリスマスプレゼントの話題や
クリスマスの思い出をみんなと
しなくていいことだけだった。

 

「お姉ちゃんばっかり!
 クリスマスなんて!大っ嫌い!」

 

 

美月はハッと目を覚ました。

 

今年のクリスマスも
目前に迫っていることに
気がついたのだった。

 

「去年は今までで一番楽しい
 クリスマスだったのにな…。」

 

◇ ◆ ◇

 

晩御飯の準備ができたので
母に食卓に来るよう呼ばれた。

 

「そういえば、あんた、
 いつまで家に居るつもり?」

 

「明良君のこと、ほっといたら
 精神弱っちゃうんじゃないの?
 男は体は強くても
 心は弱い生き物なのよ。

食卓に着くと
早々に母に言われた。

 

 

母のたわ言を聞き流しながら
晩御飯を食べようと思ったのだが
あるものが目に入った。

 

「あ、玉子焼きだ。」

美月はボソッとつぶやいた。

 

「玉子焼きがそんなに珍しい?」
母は不思議そうに返事した。

 

 

▨ ▨ ▨ ▨ ▨ ▨
明良は私が焼く玉子焼きが
世の中で一番大好きだ!って
言ってくれてたな。

母親がクリスマスに出してくれる
あの玉子焼きより美味しいって。

あんな幸せそうな顔して
私の玉子焼きを食べる人は
明良ぐらいだろうな。
▨ ▨ ▨ ▨ ▨ ▨

美月はそんなことを考えていた。

 

 

食事が終わり
コーヒーを飲みながら
母親に今回の喧嘩のわけを
ひと通り話していた。

 

「さっきから聞いてると
 自分のこと棚に上げて
 明良君の悪口ばっかりね。」

 

「明良君がしゃべらなくなった
 明良君が話を聞いてくれない
 明良君がそっけなくなった
 明良君が、明良君がぁって。」

 

 

そんなことを言われるとは
美月は予想していなかったので
あっけにとられた顔をしていた。

 

 

「自分は努力してるとか
 自分は頑張っているとか
 自分視点でしか物事見れないから
 お互いがぶつかったんでしょ?

 あんたは自分が思ってるほど
 できた人間じゃないの!
 まだまだ、お子ちゃまなのよ。」

 

美月は黙って母の話を聞いていた。

 

「【どちらか片方が悪い】
 っていう発想はおやめなさい!
 2人の問題はお互いの責任よ。

 2人の責任だ。と思うからこそ
 お互いが協力して解決できるの。

 今のあなたの思い上がった考えなら
 また、お互いがぶつかって喧嘩して
 同じことの繰り返しになるわよ。」

 

そう言うと
母はそっと美月の手を取った。

 

 

「美月、2人にとって大切なのは
 『居心地の良さ』なのよ。
 互いの居心地が良ければ
 その時の状態は関係ない。」

 

 

美月は母の手を見ていた。

 

 

「お母さんが編み物して
 そのすぐ近くでお父さんが
 新聞を読んでいる。
 別に2人とも会話しないけど
 その時間が大好きなのよ。

 編み物はどこででもできるし
 新聞もどこででも読める。

 でも、なぜだかお互いが
 自然と近くに居るのよね。
 お互いそこが居心地良いのね。

 

母はそう言うと少し笑顔になった。

 

「会話がないから仲が悪い
 っていうのは違うと思うわよ。

 会話しなくても『居心地が良い』
 という関係が大切なのよ。

 重要なのは『会話が必要な時』は
 お互いが必ず会話をすることね。」

 

 

「美月、今が会話が必要な時なのよ。」

 

 

美月の手をギュッと握りしめた。

 

 

「ほら、さっさと電話して
 あんたの家に帰りなさい!
 私とお父さんの場所を
 邪魔しないでちょうだい!」

 

「明日はクリスマスイヴでしょ!
 お母さんがしてあげられなかった
 素敵なイヴを過ごしてきなさい。」

 

実家に帰ってきて
母からこんなにも
思いが詰まった言葉を聞くとは
美月は思いもしなかった。

 

 

イエロークリスマスの小さな奇跡
パート③へ、つづく

イエロークリスマスの小さな奇跡③

 

 

 

 

 

 

 

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