イエロークリスマスの小さな奇跡③

 

イエロークリスマスの小さな奇跡
~再会編~

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
これは3話構成の物語
この記事は『最終話』
(フィクションです。)

主要の登場人物は2人
男性:明良(あきら)
女性:美月(みづき)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「はぁぁ~、今日はイヴかぁ…。
 なんで俺はイヴに1人なんだ…。」

明良は浅い眠りから目を覚ました。

 

 

「お客さん!そろそろ!
 朝ごはんの用意させてもらっても
 よろしいですか?」

仲居さんの声が聞こえてきた。

 

「もう、こんな時間かぁ。
 朝ごはんギリギリだったな。」

布団から起きて仲居さんに声をかけ
布団が片付けられて
朝ごはんが用意される様子を
明良はぼーっと見ていた。

 

 

「お客さん、今日はイヴですねぇ。」

仲居さんが明良に声をかけた。
パッと見て70歳ぐらいの方だった。

 

「そ、そうですね。」

明良はどう返答していいか分からず
少し冷たい言い方になってしまった。

 

 

「さ!用意ができましたよ!
 イヴなのにすいませんね。
 和風な朝食しかないもので。」

目の前には美味しそうな
日本の朝ごはんが並んでいた。

 

 

「あ!玉子焼き!」

 

 

子供のような大きな声を
急に出してしまい明良は
顔を真っ赤にしていた。

 

 

「お客さん玉子焼きが
 お好きなんですか?」

 

そう聞かれて玉子焼きの
エピソードを仲居さんに
詳しく話していた。

 

 

「そうだったんですねぇ。
 若い男性がどうしてイヴに
 1人で泊ってるんだろう?って
 不思議だったんですよ。」

 

そう言われて明良は何も
返す言葉がなかった。

 

 

「喧嘩するほど仲が良い!
 これは嘘のような本当の話!」

仲居さんが静かに語りだした。

 

 

「全く喧嘩しない2人も最高!
 でも、喧嘩できる2人も最高!
 だって、長い人生で気を遣わずに
 喧嘩できたのはお父さんだけ。」

 

「あ、お父さんってのは
 私の亡くなった夫のことね。
 よく2人で喧嘩してたけど
 他愛もない内容ばっかりだった。」

 

少し遠いところを見ながら
懐かしそうに話してくれた。

 

 

「他愛もない内容の喧嘩だったから
 よかったんだと思うの。」

 

「もし、喧嘩でしか本音を言えない
 という2人だったら長続きは
 してないでしょうね。」

 

 

明良はハッとした表情をした。

 

 

「『普段から、本音を言える』
 そんな2人の関係が良いのね。

 本音を隠したまま生活してて
 お互いが爆発して喧嘩して
 その時、初めて本音をさらしたら
 どちらも受け止められないわ。」

 

「『本音を言っていい雰囲気』を
 お互いが作れるかどうか?
 作る努力をするかどうか?
 受け止める努力をするかどうか?

 それが愛する2人に課せられた
 『愛の試練』なんでしょうね。」

 

 

仲居さんは明良の顔を見ると
二コリと素敵な笑顔をした。

 

 

「喧嘩したときの勝ち方!
 教えといてあげるわね(笑)」

 

「うちのお父さんがいつも
使用してたんだけどね。
『自分から先に謝る』
喧嘩以外でもそうだけど

あなたから率先して謝るの!」

 

 

明良はその答えの意味が分からず
キョトンとした顔をしていた。

 

 

「あ、ゴメンナサイ(笑)
 理由を言ってなかったわね。」

 

クスっと仲居さんは笑っていた。

 

 

「相手が先に謝ってるのに
 それ以上、こちらが文句を言うと
 こっちが悪者になるでしょう?」

 

その言葉に明良はハッとした。

 

 

「なるほど、確かにそうですね。
 子供の喧嘩と同じで
 謝ったら喧嘩は終了ですよ。
 それでも喧嘩してたら
 次は親に怒られますもんね(笑)」

 

仲居さんはそうそう!
というように、うなずいていた

 

 

「そのことを知ってか知らずか
 うちのお父さんはね。
 どんな時も先に謝ってたのよ。

 『お~!スマンスマン!』
 『いや~、ほんにごめんなぁ。』
 って言ってね。」

 

「こっちは怒っていても
 そこで試合終了よね(笑)」

 

思いがけない仲居さんとの会話で
明良の表情は明るくなっていた。

 

 

◇ ◆ ◇

 

 

「本当に素敵な旅館でした!
 ありがとうございました!」

チェックアウトの手続きを済ませ
旅館を出ようとしたとき
先ほどの仲居さんと入り口で
バッタリ会ったのだった。

 

 

「美味しい玉子焼きを
 作ってくれる彼女のもとに
 ちゃんと帰るのよ!」

 

そう言われて明良は
少し恥ずかしそうに
赤ら顔になっていた。

 

 

「あなたの胃袋を掴んだ女性は
 一生ものの宝物よ!
 その女性のご飯を死ぬまで
 美味しく食べれるんだからね。
 大切にしてあげなさい!」

 

 

「それから帰ったら
 あなたから、すぐ謝るのよ(笑)」

 

明良は深いお礼をすると
旅館を後にしたのだった。

 

 

 

そのころ、

美月も母親に追い出された形で
同じように実家を後にしていた。

 

2人は引かれ合うように
お互いの住まいに
導かれるのであった。

 

◇ ◆ ◇

 

「あれ?家の電気がついてる?」

明良は急いで鍵を開け
家の中に入っていった。

 

 

そこには、美月が居た。

 

 

「明良、おかえりなさい。
 今日はもう帰ってこないと思った。
 帰ってきてくれたんだね。」

 

明良はうなずいた。

 

 

「美月、本当にごめんな。
 あの喧嘩、俺のせいだな。」

 

「最近、仕事のストレスとかで
 美月のこと、大切にしてなかった。
 そればかりかストレスのせいにして
 美月に当たっちゃってた。
 本当に、ごめんな。」

 

 

美月もうなずいた。

 

「私も実家に帰るとか
 本当に大人げなかったね。
 あなたと向き合うのが少し
 怖かったのかもしれないわ。」

 

「それに自分のことばっかりで
 あなたのことを本当には
 見えてなかった。
 私も、ごめんね。」

 

 

美月はそう言うと
明良の大きな荷物が
目に入ってきた。

 

 

「明良、出張だったの?
 そんな大きな鞄持って?」

明良はドキッとして
鞄を後ろに隠しながら

 

 

「いや、これはね。
 傷心一人旅ってやつですよ(汗)」

 

美月はその言葉を聞くと
大口を開けて明良をにらんだが
すぐに我に返った。

 

 

「先にこの家から逃げたのは
 私の方だったわね。
 あなたがこの家から逃げても
 文句は言えないわね。」

 

明良は少しほっとした。

 

 

ピッピ!ピッピ!

 

 

その時、炊飯器から
ご飯が炊ける音がした。

 

 

「明良、お腹空いてない?
 晩御飯作ったんだけど
 一緒に食べる?」

 

明良はすぐに、うなずいた。

 

 

「イヴなのに、ごめんね。
 冷蔵庫みたら何もなくて…
 全然イヴらしくないね…。」

 

美月はそう言いながら
食卓を用意していた。

 

 

 

「あ!!玉子焼き!!!」

 

 

 

「美月!俺、お前の玉子焼き!
大好きなんだよ!
誰よりもお前の玉子焼きが
大好きなんだよ!」

 

急に明良の声のトーンが
大きくなったので
美月は驚いた。

 

「今さらどうしたの?
 そんなこと知ってるわよ(笑)」

 

 

▨ ▨ ▨ ▨ ▨ ▨
今日は、クリスマスイヴ。

パーティーの食事もなく
ケーキもプレゼントもなく

目の前にあるのは
【玉子焼き】と白いご飯。

 

でも、
それは世界で最高に
美味しい玉子焼き。

明良と美月を結び付けた
幸せの黄色い玉子焼き。

2人にとって大切な大切な
思い出の玉子焼き。
▨ ▨ ▨ ▨ ▨ ▨

 

 

「おかずが玉子焼きだけで
なんか変な感じだけど(笑)
今年のクリスマスは
『イエロークリスマス』
ってことにしとくか!」

 

美月がそう言うと

 

 

「それ、いいねぇ!
 じゃあ、これからは毎年!
 イエロークリスマスにしよう!」

と、明良は提案したのだが
美月はきっぱりと断っていた。

 

 

2人を結び付けた玉子焼きが
喧嘩して離れたお互いを
再び結び付けてくれた。

 

そんな小さな奇跡が
2人に舞い降りた
イエロークリスマスだった。

 

 

「明良!そう言えば!
 一人旅で行った旅館に!
 私も連れて行きなさいよ!
 約束だからねー!」

 

玉子焼きを食べ終わり
2人はお互いの意見を交わした。

 

 

それから、

今から少しでも
クリスマスを味わうべく
コンビニにクリスマスケーキを
買いに行ったのだった。

 

 

イエロークリスマスの小さな奇跡
おしまい。

 

 

 

 

 

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